2009年12月25日 浜松御前崎自転車道〜大井川へ


年をとると体力と共に睡眠力も衰える。だいぶ前に聞いた言葉だが事実のようだ。朝、”おお!寝たぞ”と思って目が覚めることが少なくなってきた。ここ数日続いた寒波、強風の日から今日は暖かな好天が約束されている。朝に弱く寝不足気味だった「シゲさん」だが猛烈に起き天竜川へ向かった。
初めての地域では駐車場探しが第1の課題だ。この日は天竜川左岸の堤防下に感じの良い駐車場を見つけた。”ついている”。「シゲさん」は天竜川の堤防を真直ぐ太平洋に向かった。優しいカーブと穏やかな起伏を伴って海岸沿いの自転車道はどこまでも続く。「シゲさん」は思った。穏やかなカーブが大事なのだ。蛇行は人の心を落ち着かせるのだ、と。川だってコンクリートで「護岸」された真直ぐな川は少しの雨ですぐ暴れるのだ。

自転車道は時々途切れ国道150号を迂回する。もう一度海岸の自転車道に戻るにはちょっと標識が不足だな、と思いつつ自転車道に戻る。平日のせいもあるだろうがとにかく人に遭わない。途中一人だけ自転車屋に遭った。彼は猛烈な勢いですれ違って行った。あとは散歩している地元の人とか。そうそう、枯れ木を自転車に一杯積んだホームレス風なおじさんもいた。こんな自転車道を一人で走るなんて贅沢極まる。橋だって長大なやつが、ただ自転車のためにだけ架けられているのだ。
西部劇に出てきそうな荒廃し、半ば砂に埋もれた建物で休憩する。浜岡原発の建物も近くなってきた。浜岡原発の手前で長かった浜松御前崎自転車道は終わる。国道150に戻り県道357から御前崎に向かう。

天竜川の堤防からここまで60km。まだ大井川は遠い。急がなくちゃ、と思っていたら後輪に異常な感触。パンクだ。タイヤに長さ2〜3mmの鏃のように鋭い小石が刺さっていた。この時点で明るいうちにJR島田駅に着くのを諦めた。国道150を大井川に向かうが車が多くなってきてストレスがたまる。途中から県道31号に逃げたがこちらも同じ。大井川左岸の河川敷ロードに出て、やっとストレスから開放された。牧之原台地に沈み行く夕日を眺めながら、幅広い舗装された褐色のロードを走る。なんて贅沢なロードだと思う。寅さんも歩いた蓬莱橋に着く頃は暗かった。今日は太平洋岸の長大な自転車道と大井川河川敷ロードを一人占めしたな、と思いながら島田駅に向かった。
最後に気にかけていたことが現実になった。JR豊田町駅で降りた時方向が分からなくなった。通常「シゲさん」は初めての土地に降りる時は乗ってきた列車が走ってきた方向を記憶することにしてる。方向音痴にならないためだ。ところがこの日は駅のエレベータに乗ったり階段をぐるぐる回っているうちに分からなくなってしまった。駅前の地図を眺めても走り出す勇気がわかない。知らない土地で夜空の中をうろうろするわけにはいかないのだ。通りがかったおばさんが地図を指差して一所懸命教えてくれたが「シゲさん」は方向感覚が180度ずれていて説明が納得できない。寒さが身に浸みだしてくる。2人の人に”北はどちらですか?”と確認した「シゲさん」頭の中に地図を描いて走り出した。やがて夜空にいつも見ている木星と月を認めた「シゲさん」は一気に安堵し無事天竜川の堤防にたどり着いた。100kmを超えるツーリングは久しぶりだった。