諸刃の刃ならまだしも・・・・

10月8日、4回目の抗がん剤投与を終え5回目投与前の診察の時、担当医が「今回は投与を止めましょう、赤血球の数値が低すぎる」と言った。実は自分もこの日に5回目の投与を受ける気がしなかった。体が元に戻らないのだ。

赤血球の数値は健康体として必要とされる最低値の6割にも達していなかった。心臓への負担はハンパじゃなく、階段を上がるにも息が切れる。自転車だって町内のコンビニに行くだけでも息が切れる。野山を走っていておばさんに抜かれたことを悔やむ回復期のアームストロングの比ではない。ペダルを漕げないのだ。担当医は輸血も考えていると言っていた。
2週間後の10月29日、再度外来で担当医と採血結果を見る。白血球は正常値に戻っていたが赤血球は最低値の71%ましかで回復していない。この頃30分ほどの散歩ができるようになったのは赤血球がやや回復したからだろう。だが、腎機能を示す数値が異常値だ。担当医は5回目の抗がん剤投与を勧めたが自分の感覚としては「このまま抗がん剤を続ければ身体へのダメージはさらに深くなり抗がん剤に殺される」ということだった。
肝心のがん細胞はどうか?5月と10月のレントゲン写真の比較では病変部の色がやや薄くなっており、担当医は「全然変化のない人が約50%いるので抗がん剤が”効いたほうだ”と言えるのではないか。ただ、期待したほどは効いていない。5回6回と進めてもどれだけ効果があるか分からない。ただ、やってみる価値はある」と、正直だった。
抗がん剤を続けるかどうかの判断を求められた。担当医も副作用のことを考えるとどちらとも言えないらしい。今は30分ぐらいなら散歩もできる。自転車だって先日彦根と長浜の黒壁スクェアを会わせて11kmくらい走ることができた。昨日だって休み休みだが庭木の剪定もできた。剪定しながら”気持ちよく動けることの幸せ”を噛みしめていた。抗がん剤をうけいれれば、またこれらがぜんぶ吹っ飛ぶのだ。かみさんの作ってくれた料理だって匂いをかぐだけで拒否反応を示すのだ。
せめて、諸刃の刃が欲しい、と思う。今使っている刃(抗がん剤)は正常細胞には切れ味が鋭いが、がん細胞には切れ味が鈍い。QOLのことを考えれば抗がん剤は止めたほうがいいと思った。担当医も同意した。