背後から声が聞こえるような


今年は長良川の春を見に行けなかったが木曽谷の春を見逃すわけには行かない。
一昨年の春には、木曽谷も見納めだと思って走ったものだ。
坂下駅からJRに乗り込む。

野尻駅で降りる。
駅前からまだ白い木曽の山々が見える。
熊ン蜂見たいな奴がブンブン飛び回って、藤の花にこれ以上近づかせてくれない。
花と青空のスカイラインに黒く見える奴が蜂。

八重桜と新緑の山。
野尻宿から。




石仏様の花挿しが空っぽだったので、去年と同じように後のツツジを折って花挿しに入れた。石仏様のお顔が一瞬嬉しそうになったと思ったが、気のせいか。



ここは一昨年辺りは満開で見ごたえがあったがもう遅かった。

そのかわり、咲き始めたつつじの中をポタる。





走っているより休んでいるほうが多いが、
南木曽駅前のベンチで本格的に大休止。
三留野宿の面影を残す駅前風景は、須原駅前と同じように気に入っている。



読書発電所前の碧い水面と新緑を写して国道に沿ってしばらく走っていると、後のほうからプシュッと音がした。
あれ?パンクだがや。
走行中のパンクは何度も経験している。
リムに対してタイヤの嵌め合いがちょっときついので苦労するだろうけど、15分もあれば片付くさと、頻繁に通り過ぎる車の轟音を背後に聞きながら作業を始めた。
まずタイヤを外すのに一苦労。固いなぁ。一汗かいて外した。
次にスペアチューブを入れてタイヤを嵌めるのだが固くてどうしても入らん。3年ほど修理してないが前はどうやって収めたんだろう?
30分、45分と時間は過ぎていく。
車の騒音があまりにうるさいので100mほど離れた空き地を見つけそこへ移動した。”お前なぁ、こんなことしてていい身体じゃないんだぞ”と思いながら再チャレンジ。やり方をちょっと変えて強引に押さえ込んだら、入った!!
ふぅ〜手間を取らせるぜ。
さぁ、空気を入れよう、スカスカスカ・・・・・・ ?
あれ?入らんぞ? もう一度、二度、三度、四度、何度試してもダメ。
タイヤレバーで強引にタイヤを押し込んだ時にチューブを傷つけたかな、と思ってもう一本持っていた予備のチューブに空気を入れてみる。
スカスカスカ・・・・ 入らん。 スカスカスカ・・・・やっぱり入らん。
”空気入れも3年以上使ってないからパッキンでもいかれたんだろうか? いやそれしかない”

結論。最寄の駅まで歩くしかない。
田立駅まで1.8km”の標識を眺めてため息をつく。身体がどうのこうのって歩くしかない。途中軽トラでも見かければ事情を話して乗せてもらおうと思ったが、田舎の道は誰もいない。たまに乗用車が行き過ぎるだけ。
こんな景色も上の空。
とぼとぼ歩いてやっと田立駅に着いて、時刻表を見るとあと5分 !!!!
これに乗れないと2時間待ちだ。自転車を袋に入れなくちゃ !!
あれ?入らん? あっ自転車の置き方が上下反対だ。
あれ? まだ入らん。あっ、袋が左右反対だ
あちゃー列車がホームに入ってきたぞ。どうする? どうするもこうするもない。ベンチに散らけた荷物をザックに放り込み、車輪を2個手にぶら下げて車内に飛び込んだ。



後日談。
家へ帰ってもその日は何もする気になれず、翌日(今日)調べてみたら空気入れは正常だった。
交換したチューブは、タイヤレバーでついたと思われる傷がついていた。予備のチューブは成型時の合わせ目と思われる部分からひび割れていた。購入してから5年は経つチューブだが劣化だろうか?
昔、山友達が「ナイロンザイルは紫外線に弱いから期間が過ぎたら捨てる」と、言っていたたのを思い出した。チューブだってゴム製品だから同じことなのだろう。
それはともかく、
この日の出来事が「もういい加減やめんかい」という声にも聞こえてきたのは、やはり弱気になっているんだろう。
でもなぁ、ちょっとでもペダルを踏む力が残っていれば春の木曽谷へはやはり行きたい。新緑と、花々と、爽やかな風を感じに。鶯のソロと、蛙の合唱を聞きに。
あの石仏様だって、あの山の麓で待っていてくれるにちがいない。